ストーリー

第9話 雷鳴の中の敵襲 僕達だけで戦うんだ!

司令部からは何の応答もないまま、一週間がすぎていた。

ロディは今日もシミュレーターの中で操縦訓練。最高レベルに挑戦していたが、2機を相手に何度も挟まれては被弾していた。シミュレーターから降りてきたロディに、バーツが分厚いマニュアルを放り投げた。その中に、挟まれた場合の切り抜け方のヒントが書いてある、という。しかし上の空なロディ。あれから一週間だな、とつぶやくように言った。

いつまで待ってなきゃいけないのか、このままじゃオバンになっちゃうよ、と管制室ではマキがスコットに毒づいていた。スコットは、その質問には答えず、きみで5人目だ、と言った。みんな同じ事を質問しに来ていたのだ。そこにロディとバーツが現れた。何か連絡は?というバーツを見て、これで7人、とスコット。

ケイトとクレアは食料庫にいた。来たときより大分減っている。
軍からの連絡がこのままなければ、みんな飢える可能性がある、でも、一ヶ月くらいはもつだろう、と話していた二人は、背後の気配に気付いた。もしもという時のことを考えると、ああいうのは許さない方がいいわ、とケイトが言った視線の先には、ちょろまかしたソーセージを引きづり忍び足で立ち去るケンツの姿。
コラ!とクレア。食料が足りなくなったらこまるでしょ、頭の黒いネズミさん、と言われ、渋々ソーセージを返すケンツだったが。
ちゃっかりポケットにひとつだけソーセージを忍ばせていたのだった。
ソーセージを食べていたケンツの耳に、水音が聞こえてきた。視線の先にあるドアから光と水音が漏れている。誰かいるのかとドアを開けると、鼻歌を歌いながらシャワーを浴びているシャロンの、全裸の後ろ姿が目に飛び込んできた。はっとするケンツ。
頭を振り向けてケンツに気付いたシャロンは一言「スケベ」と面白そうに言い、ケンツの方に両手を広げて裸を晒した。仰天したのはケンツの方。目を白黒させながらしっぽを巻いて逃げ出した。

管制室にいるマキ・ロディ、バーツ、スコット。マキが、こちらから司令本部を呼び出してみたらどうか、と言う。そんなことをすれば敵に自分たちの存在を知られてしまう。が、スコットはそれに同意した。彼もこの膠着状態にうんざりしていたのだ。そんな大事なことを勝手に決めていいのか、とバーツは反対するが、今は敵の影もないし、心配ない、何かあれば自分が責任を持つ、と言う。ロディまで賛成したため、バーツもとりあえず承知。
司令部を呼び出したが、やはり応答はなかった。もう少し出力を上げてみる、というスコットに、今度はロディも待ったをかけた。敵が現れたのだ。この基地に侵入する確率は0パーセントだったが。

基地の上空に雷が鳴り出し、基地内が停電。落雷(サージ?)があったらしい。しばらくすればサブの電源が動き出すはずだが、その間に敵が近づいてもわからない。不安なまま復旧を待つ管制室。
真っ暗な基地内をケイトが手探りで歩いていると、前方からろうそくを掲げたジミーとカチュアが。ろうそくをジミーから分けてもらったケイト達の耳に、ここ開けてよーと扉を叩くシャロンの声。

サブの電源が動き出した。管制室に光が戻る。とたんに、敵影がレーダーに現れた。識別コードXFT Aタイプ(初めて?)フローティングタンク1機がレッドゾーンに接近中。
管制室に集合の指示を受けて廊下を走っているペンチ。なぜかフライパンを持っている。クレアにそれを指摘され、あらいやだ、と振り返った途端、フライパンがいつの間にか背後にいたフレッドの顔を直撃。

ケンツはでかいバズーカを部屋から持ち出していた。そこに上着を着ながら片方の胸もあらわに廊下を走ってきたシャロン。ケンツがまたも仰天。かついでいたバズーカを自分の足の上に落とし飛び上がる。バーカ遊んでる場合か、敵だぞ!と言いながらシャロンは駆けていった。

ジャーゴ2機を載せて、フローティングタンク(一瞬だが)初登場。廃墟の中を何かを探しながらバッタのように飛びはねて移動するジャーゴの姿を、子供達は管制室のスクリーンで固唾をのんで見つめていた。
やがてジャーゴは、街のはずれにあるアゾレック基地にたどりついた。格納庫を見られたらシャトルが見つかってしまう。と、シャロンが素っ頓狂な声を上げた。洗濯物を外に干しっぱなしだったのだ。雷雨の中、洗濯物はずぶ濡れになっていた。入れなかったの、とクレアに聞かれ、だってオレ干す係だもん、ととぼけるシャロン。そこでペンチが、また洗わなきゃね、と謎の発言。
洗濯物が見つかったら、一発で子供達の存在が敵に知れてしまう。苦悶の表情で、無線を使わなければよかった、と呻くスコット。
とうとう格納庫の中のシャトルと洗濯物を敵に発見されてしまった。そのときカチュアが、ケンツがいないことに気付いた。物陰から、ジャーゴをバズーカで狙い撃ちするケンツ。しかしものの見事に外してしまう。ジャーゴの攻撃を受けるケンツを見て、ロディとバーツが管制室を飛び出した。
モニタの中で、ケンツは見事な逃げっぷりを見せていた。それを見て、マキ・フレッド・ペンチ・スコット・クレアが次々に応援に飛び出す。カチュアにマルロとルチーナを託し、ケイトも応援に向かった。
ケンツが敵の銃弾に躓き、倒れ込んだ。絶体絶命、と思ったその時、背後からバズーカ砲が。ロディだ。バーツもフレッドもマキも…みんなが銃を持って援護している。その隙をぬって、ディルファムで出撃するロディとバーツ。
スコットは無線を使ってみんなを危険に追い込んだことに、責任を感じていた。退却を知らせるマキの声も耳に入らない様子で、銃を打ち続けている。マキに引きずられるようにして、戦線を下げるスコット。
ディルファムで出撃しようとしたロディ、なぜかエラーが出て起動しない。バーツは先に出て行った。焦りがエラーを誘うのか、なかなか起動しないディルファムにいらだつロディ。バーツは単機、敵と交戦。
敵の攻撃に倒れ込んだバーツのディルファム、レーザーが出なくなった銃を敵に投げつけて、敵にタックルし奮戦。やっとディルファムを起動させて追いついたロディだったが、早速敵2機に挟まれてしまう。シミュレーションと同じ状況だ。マニュアルを読まなかったのか、というバーツに、何て書いてあったんだ、とロディ。シェードだ、と言うバーツ。次は?のロディの問いに、知らない、自分も実はそこから先をまだ読んでいない、と言う。仕方なく、左右に銃撃をかけながら走り出すロディのディルファム。
その頃格納庫には、シャロンとフレッド・マキの姿が。いっぱい出て行けば、びっくりして敵が逃げていくかもしれない、と思ったのだ。ろくに動かし方を知らないのに、ディルファムに乗り込む3人。

ロディのディルファムが倒れた。敵が近づき、発砲しようとした直後、3機のディルファムが格納庫から出てきた。敵機が怖じ気づいた隙を狙って、ロディが敵を銃撃。
煙を上げて倒れた敵機の操縦席から、アストロゲーターが出てきた。生々しいその姿に驚いたロディは、それ以上攻撃できないでいる。その隙に、もう一機がアストロゲーターを救い上げ、煙を上げている自軍のメカを破壊した後、退却していった。

フレッドたちのディルファムが近づいてきた。兄の無事を確認するフレッド。まだ油断するな、と言ったロディのディルファムの脇を、マキとシャロンの乗ったディルファムはなぜか通り過ぎていった。戻ってこい、というロディに、どうやって止めるの、と逆に聞き返すマキ。二人は止め方を知らないのだった。えーと驚きながら、イグニッションを切ればいい、と教えるロディ。マキの方はすぐにスイッチがわかったらしいが、シャロンはわからなかった。わかんねーよーと叫びながら、尚も前に進んでいく。その目の前に、敵のフローティングタンクが迫ってきた。意趣返しのようにシャロンのディルファムをかすめた途端、衝撃で機体が仰向けに倒れ、操縦席の中でひっくり返るシャロン。もう二度とこんなものに乗らない、とひとりごちるのだった。

今だ銃を放ち続けるスコットの肩に、ケイトが手をおいた。もうおわったのよ、と。
皆が奮戦する中、ケンツは基地内の柵に引っかかっていて、無事だった。

雨後、アゾレック基地に虹がかかった。集まっている子供達だったが、何かを話す風でもない。戦闘のことを、かっこよかったねーと話すマルロとルチーナを、うるさい、とシャロンが一喝。
と、向こうの方からジミーが何かを運んできた。基地の中から武器を探してきたのだ。しかし、皆の様子を見て、やっぱり今回も遅かった、と悟って顔を真っ赤にして帰って行くジミー。

あれだけシミュレーターで訓練を積んだが、初戦は運だけだった。実戦は違うのだ。そう話すバーツとロディの間にケンツが割って入った。自分だったら敵を逃さなかった、どうしてとどめをささなかったのか、と言うケンツを、思わず睨むロディ。ロディはあの無力なアストロゲーターを見た。どうしてあの姿を見てとどめをさせるというのだろう。ロディの様子に一瞬気圧されたとはいえ、それでも言葉を返そうとするケンツに、バーツが、おれたちは殺し屋じゃないんだ、と言う。それでも納得しようとしないケンツの目の前を、シャロンが割って入った。急いでシャワー室を飛び出したシャロンは、パンツを穿くのを忘れていたのだ。スカスカのスースー、と言いながら基地内に戻っていくシャロンを見て、やっと子供達から安堵の笑い声が出た。

とうとう敵に自分たちの存在を知られてしまった。このまま司令部を待ち続けるべきなのか、苦悩するスコット。

//////
敵2機に挟まれた時の対応としてバーツが言った「シェード」(多分)って、一体どんなことを言うんだろう。「SHADE」?一瞬ディルファムの体勢を低くしていた、あれだろうか。
その他の感想についてはミューラァlog/SPS-V: ANIMAX-バイファム8話・9話へ。

     

管理人へのMail

メールフォーム
※別窓が開きます。