ストーリー

第3話 生存確立0.29%!絶望への挑戦!

今は艦長となっている中尉が、乗員全員を集めて話をしている。
我々は今、ベルウィック星へ向けて航行中だが、乗組員は中尉を含めて8名だけであり、いつ敵と遭遇するかもしれない現状では、この数はきわめて不十分であると言わざるを得ない。そこで民間人に、ジェイナスが搭載しているビーム砲など火気類の砲手として協力してほしい、という。
口々に協力を申し出る民間人たち。全員が一致団結して敵にあたることになった。
操作の説明のために会議室へ移動したが、クレーク博士とケイトは中尉に呼び止められる。別の仕事を手伝ってほしい、と中尉に促され、二人はジェイナスブリッジへ向かった。

無重力バレルにつかまった少年が、自分も志願したい、と申し出た。乗組員も他の子供達もびっくり。少年は、自分はキャノン砲を撃った「ケイゲン」がある、と鼻高々に言ったが、それを言うなら「経験」だろ、と乗組員に突っ込まれ、さらに、ダメダメ君にはまだ無理だ、ここでおとなしくしてなさい、とけんもほろろの言われよう。おれのとうちゃんもにいちゃんも軍人なんだぜーー!と、閉じかけたドアに食らいついても無理だった。

ブリッジでは、第2ステーションのやつら、居眠りしてるんじゃないのか?とオペレーターが首をかしげている。ベルウィック第2ステーションとの通信を開始したのだが、一向に応答がないのだ。向こうも混乱しているのかもしれない、暗号周波数ではなく、一般周波数を使ってみろ、と中尉は指示。

食堂では、マルロが、軍事おたくの少年に、ほんとにキャノン砲を撃ったことがあるの?と聞いている。おれがお前くらいの歳(4〜5歳)にな、と自慢げに話す少年。すごいなあ〜と純粋にびっくりするマルロ。あんたおなかすいたって言ってなかった?と脇からルチーナに言われる言葉も耳に入らない。調子に乗った少年、キャノン砲は撃ったときの反動がすごいんだほんとだぞ〜などと声を張り上げ自慢話を繰り広げる。
それをちょっとあきれ顔で見ていたロディとフレッド。あいつおかしなやつだな、とロディが言うと、フレッドが笑い出した。だってにいさんも前はかなりおかしかった、猫をつかまえてきて、しっぽを引っ張ればサイレンだ、なんてことがあった、という。自分のしたことなのにロディは思い出せない。後ろでペンチがそれを聞いて笑い出した。猫をいじめるやつは最低だね、とマキにまで言われ、ふてくされるロディ。
ちょっと待っててね、すぐできるから、とクレアが他の子供達のために食事の準備をしている。ルチーナに、マルロはほんとうにお食事しなくていいの?と聞くが、いらないって、とルチーナ。横にいたシャロンが、食べたくないやつはほっといて、おれの飯はまだ?と催促。食器を返しにきたマキに、あんたの場合は特別メニューだもんね、ニンジン抜きタマネギ抜きピーマン抜き、ついでにお肉も抜いちゃったら?そんなことじゃ生き残れないな、と突っ込まれる。余計なお世話だ、とシャロン。クレアが、あなたの分も食事ができた、とスコットを呼んだ。だが、返事はなく、ただ考え込んでいるスコット。両親のことが心配なのだと気付くクレア。スコットにそれを言うと、クレアは心配じゃないのか、と聞く。心配だけど、無事だと信じている、というクレア。そうでも思わなければこんなところでじっとしていられない、そう思わない?と気丈な答え。
突如、けんかが始まった。軍事少年とマキだ。マキは、こんな子供がキャノン砲を撃ったなんて信じられない、ほらに違いない、という。撃ったと言い張る少年。両者実力行使に及ぼうとしたとき、スコットが止めに入った。今はけんかなんかしている場合じゃない、自分がどういう状況にあるか知ってるだろう、というスコットに、この中で一番年長なのに志願もしなかったやつがでかい口をたたくな、と軍事少年が噛み付いた。ばっかみたい、(けんかを)止めることないじゃん、とやはり冷めた目で冷やかすシャロン。

ブリッジでは、オペレーターがベルウィックオービタルII(第2ステーション)を呼び出し続けていた。中尉は、クレーク博士とケイトに状況を説明している。幸い、今までの敵の攻撃パターンを見ると、敵はジェイナスの戦闘能力を計っている様子であり、もし敵が総力を挙げて攻撃してきたときは、覚悟していただく必要がある、と。その時、警告音が鳴り響いた。フェイズ1、プラス120度に敵影、フェイズ2に入ります、とボギー。

食堂では、スコットと軍事少年が対峙している。ぼくはこわいと思ったんじゃない、と言うスコット。まだその年齢に達していないと思っただけだ、と。そしてその場を立ち去ろうとするスコットに、軍事少年が取り付き、逃げる気か、と非難の声を浴びせかけた。スコットはそれをのけ、自分も戦闘部署に配置してもらうよう言ってくるんだ、といい背を向けた。そうこなくっちゃ、とおもしろがるマキ。心配するクレア。スコットが食堂を出て行こうとしたとたん、警報が鳴り響いた。敵接近、ただいまより戦闘態勢に入る、という艦内放送。緊張する子供達。

敵影、120度から123度へ移動中。グレード3.5、最接近は23分後。フェイズ3だ、と中尉。敵艦のスイープデータはもう出たか、という中尉に、観測域が狭すぎて、アンサーが出ない、と答えるオペレーター。敵影がひとつというのはおかしい、というクレークの疑問に、それは偵察機であると推測をする中尉。偵察機がいるということは、敵本体がどこかにいるはずだ。センサーのレンジを最大に上げての敵本隊探索を指示。ボギーがスキャニングを開始。同時に、艦内の電圧が低下するため警報が出された。

民間人砲手が各砲台に配置される。どっからでもかかってこいと意気込む、昔軍隊にいたという老人。敵の光を認め、ブリッジの指示を待たずに発砲。遠すぎて届かなかったが、中尉から発砲命令をしていないのにどうして撃った、としかられる。相手は訓練を受けた人間ではない、とケイトが中尉をたしなめるが、中尉は、このまま放っておけば統率が乱れる、と言う。
その時、ボギーが敵の本体を発見した。95度、1.1ミル。グレードマイナス4。
そこへ、スコットがやってくる。敵影、グレードマイナス3からマイナス2へ、と言うボギーの声がブリッジに響き渡る。すごいや、と思わず声をあげたスコットに中尉が気付いた。だめじゃないかこんなところに来ちゃ、という中尉に、戦闘部署に配置してほしい、と志願するスコット。驚く中尉。
敵の分析結果が出た。識別コードXU23A。敵の機体から、戦闘兵器が5機発進された。グレード0に突入。
中尉は、乗組員全員で攻撃をかけることを決断。ブリッジには、クレークとケイトしかいなくなってしまう。二人でここを制御しろというのか、と言うクレーク。中尉は、脇にいるスコットに目を向け、君はコンピュータを扱えるか、とスコットに問うた。少しなら、と答えるスコット。まさか、子供達に、驚くケイト。
中尉は、ラウンドバーニアン6機、パペットファイター2機の発進準備を指示。

艦内に警報が響き渡る。本格的に戦闘態勢に入るジェイナス。

コンピュータを扱えるということで、ロディ、マキ、フレッドが走ってきた。中にいた乗組員と入れ替わりにブリッジに入る3人。
子供達には無理だ、というクレーク。今は議論をしている場合ではない、という中尉。入ってきたロディたちに、博士の指示に従うように、と言い残してブリッジをあとにする。
子供達は、コンピュータを監視する役目をする。そんなに緊張しなくて大丈夫、簡単なオペレートだから、言われたプログラムを呼び出してくれるだけでいい、とケイト。
この中で、一番コンピュータに詳しいのは誰、とケイトに聞かれ、5年間勉強していたから、多分自分だ、と言うスコット。じゃあ、レベル2ね、とケイト。ちょっと待って、とマキ。マキは3つのときからやっている(9年?)から、レベル4でも平気だと言う。フレッドは7年くらいやってます、と答える。ロディは、口ごもりながら、ちょっと触った程度で、と言う。じゃあレベル1ね、と言われているロディの傍らで、フレッドがもぞもぞしだした。おしっこだ。今のうちに言ってらっしゃい、あとで行きたくても行けなくなるわよ、とケイトが気遣う。早くしろ、中尉たちは今発進した。あと7分で敵の勢力圏に入るぞ、とクレーク。

ジェイナスを離れて行くバイファムの中で、中尉は自分の家族のことを思い出していた。そこに、2番機から、あと30秒で敵の勢力圏に入ります、と連絡が入り我に返る中尉。ジェイナス砲座4番から8番に、右10度から50度で迎撃態勢に入れ、と指示。
敵のミサイルが飛んできた。各員、砲撃開始。いくつかのミサイルがジェイナスに命中。その衝撃に悲鳴を上げる子供達。大丈夫だ、この船はそう簡単にやられはせん、とクレークが皆を落ち着かせる。
さらに敵からミサイルが放たれた。被弾するジェイナス。
ナンバーE2地区のダメージコントロールが点滅している、とスコット。わかったわ、こちらに廻して、とケイト。ダメージを受けたブロックを閉鎖。

ネオファムが一機やられた。敵本隊が来る。左右に散開しろ、と中尉が指示を出す。

モニタを見ていたマキが、4番砲座を呼んだ。右上25度より、敵よ、と。しかし4番砲座にいる男性と女性には、敵の姿が見えない。どこよ、見えないわよ、と空を見渡す二人。そんなはずないよおばさん、よく見て!とマキが叫ぶ。どこよ見えないわよ、とまだ敵を発見できない二人の眼前に、銃口を向けた敵がいきなり降ってきた。瞬間、吹き飛ばされる砲座。と、隣の砲座にいた軍隊上がりの老人が、敵討ちに燃えてその敵を撃ち落とした。思い知ったか!と涙ながらに言った直後、この老人も横から銃撃を受けて散っていく。

ブリッジにルチーナが泣きながら走ってきた。切迫した状況を幼いながらに肌で感じ取っているのか。それを追って、子供達が全員ブリッジに来てしまった。大丈夫よ、とケイトは安心させようと子供達に声をかけるが、ジェイナスが受けたダメージの状況を映すモニタを見ているスコットは震えが止まらない。

外は、中尉を含めてもはや4名しか残っていなかった。中尉の乗ったバイファムが被弾。片腕を飛ばされる。どうした、と声をかけたクレークに、そろそろ回避シークエンスに移ってくれ、と中尉。わかった、すぐに準備にかかろう、と通信を切ったクレークに、スコットが、だめです、とても追いつきません、と声を上げた。人員減少率が1.2です、30分後には全員死んじゃうんだ、と絶望した声で言う。にわかには信じられないクレークが、再計算を始めた。その結果は、生存確率0.29%。呆然とするクレーク。

また一機ネオファムがやられた。戦闘兵器だけでなく、敵艦が眼前に現れたのだ。あきらめるな、と中尉。生存確率0.29%ということは、まだ助かる確率があるということだ。
奇跡を見せてやろう、そう中尉はつぶやいて、他のパイロットにジェイナスへの帰還を命じた。どういうことですか、と困惑する部下に、言われた通りにしろ、これは命令だ、と中尉。命令には逆らえず、部下二人は帰還していった。
さて、と中尉は言って、モニタを見た。敵は体勢を整え直したようだ。敵艦をヘッドオンし、バイファムの進路をセット。そのデータを見て、何をする気だ、とクレーク。中尉は、あとのことはよろしくお願いします、と言い残して、通信を切った。
中尉の下した決意に、なす術もないクレーク。

中尉の乗ったバイファムが猛然と敵の中に突進していく。自爆装置がセットされました、脱出して下さい、というコクピット内の音声。
行く手に立ちふさがったウグをも巻き込み、中尉と家族の思い出と共に、バイファムは敵艦に体当たりしていった。爆発・炎上する敵艦。敵機動兵器は中枢を失い、撤退していった。

あれが生存確率0.29%だったとは、とケイト。所詮はコンピュータがはじき出した確率だ、人間の決意など算出できるものではないだろう、とクレーク。
艦内を見てきた乗組員二人が帰ってきた。生存者はブリッジにいる人間だけだった。大人4人の他は子供達だけ。と、その時他の船からの入電が入った。なんと、クレアの父親からだった。
クレアの父、バーブランド大佐によると、スコットの両親も、クレアの父の船にいるらしい。
第2ステーションとの連絡がついたかを、クレークがバーブランド大佐に尋ねる。やはり、通信不能だと言う。最悪の事態を考えておいた方がいい、とバーブランド大佐は言った。第2ステーションは、おそらく、と言いかけたとき、バーブランド大佐の元に情報が入った。交信はこれまでだという。バーブランド大佐の船に、敵が接近しているのだった。妨害電波が入り、映像が乱れ始めた。クレークに、子供達をよろしく、ベルウィック星で…と言い残し、通信は途絶えた。
親達に再会できることを信じ、ベルウィックを目指す子供達。この時乗員14名。うち兵士2名、クレーク・ケイト、他未成年者10名となっていた。

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3話にもいろいろ難しい用語が出てくるのでメモ。

■観測域が狭すぎて…データに対する観測の巾。サイコロのどの目が出やすいかを調べる場合、一回振っただけではわからない。こういう時、観測域が狭いという…ふ〜〜ん。なるほど。「トリビアの泉」で「トリビアの種」を検証するときによく「2000人」という数字が出てくるが、それと同じこと?
■レンジ[range]…天火とこんろを備えた料理用かまど。ではなく。変動・影響などの範囲。分布幅。レーダーなどの捜査範囲に使う。レンジが小さければ、細部までわかるが、大きな範囲はわからない。レンジが大きければ、その逆となる。……高解像度で絵を描いたときに、100%に近いビューで描くと線や色の微妙な具合はわかるけど、全体が把握できなくて困る。逆に全体表示で描くと、どっかはみ出していたり線がギタギタになっていたりする。……な感じかにゃーー(すごい個人的経験値すぎ)
■敵射程圏…敵の火器の射程距離と思われる距離によって設定したライン(推定)……敵がこっちの射程圏に入ったって意味かと思った。
■シーケンス[sequence]…フェーズの集まり。ある事を実行するための手順で、手順のひとつひとつがフェーズ、シーケンスは最初から最後までのこと。
■ミル[mil]…1/1000のこと。‰でパーミル [per mill]と呼び、傾斜や勾配などを表す時に使う。

スイープデータ…なんとなく意味はわかるけど、どう訳していいのやら〜
センサーのレンジを最大に上げてスキャニング始めると、艦内電圧が下がるなんてセリフ、妙にリアルだ…
対抗兵力のコマンドを解放ってどういうこと?コマンドは「command」?「commando」?……って前者だとは思うが。
「そんなはずないよおばさん!よく見て!」のマキとおばさんのやり取りが印象的。初めて使うコンピュータの前で自分の役割を幼いながらも果たそうとするマキ。こっちはわかっているのに相手に伝わらないもどかしさと焦り、そして回避できなかった死。仕方ないよね…マキのせいじゃないよ。おばさんの眼鏡の度が合ってなかったんだよきっと…。
中尉の子供、マルロにしか見えない……(誰に似たんだ?)
やっぱり語らずにおれない中尉のこと。
ここまで大活躍(生存確率0.29%をひっくりかえす)の人なら、普通名前付けてもよさそうなもんだが、逆についてないことで、バイファムの世界観が表現されている気がする。この中尉が個人として特別だったわけでなく、あくまで、「民間人をベルウィック星へ一人でも多く送り届ける命を担った軍人の一人」という記号。そこに家族との思い出、生き残った二人の兵士の敬礼、が丁度いい具合に効く。本来なら泣き所になるシーンなんだが、子供達視点で見るならば、戦争というものがどんなものなのかを初めて目の当たりにして、悲しみより驚愕・不安・恐怖の方が大きいはずで、今後の主役となる子供達に視点をスライドしやすいように、切なさは絶妙な加減で抑えられる、このバランスが好きだったりする。
参考:ミューラァlog/SPS-V: ANIMAX-バイファム3話

     

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